<注釈トリビア〜第一部>

 

このページは、もとの文集にはなかったここだけのコンテンツです。

少女たちの手記を朗読されているストーリーテラー高階經啓さんによる、

注釈や新発見や楽しいトリビアが満載。

言葉の意味や時代背景などを知れば知るほど、

少女たちの手記をより立体的に読むことができ、

共感も深まるのではないでしょうか。

 

◆失われたもの

・昭飛

武蔵高女の女学生の多くが勤労動員されたのは、昭和飛行機工業の工場でした。昭飛jは昭和飛行機工業の略。

 

第九・明星・帝国第一

東京都立第九高等女学校(現東京都立多摩高等学校)、明星学園高等女学校(現 明星学園中学校・高等学校)、帝国第一高等女学校(現 吉祥女子中学校・高等学校)のことで、いずれも女学校です。

 

 

◆昔のままの青梅寮

コーリャン飯

コーリャンはモロコシ、タカキビとも言われます。

戦時中や戦後の食糧難の時期には白米の代用食として食べられたけれど、

おいしくなかったという感想をよくみます。

いまでこそタカキビは栄養価が見直されたり、ヴィーガン向けのハンバーグに使われて

もてはやされていますが、皮肉な話です。

 

すいとん汁

第二次世界大戦末期から終戦にかけ、食糧事情の悪い時期の日本では

主食の米に変わる代用食として、すいとんの名を借りた料理が作られた。

戦争による物資に乏しい時代背景から小麦粉が不足していたため、

大豆粉やトウモロコシ粉、高粱粉、糠などが混ぜられたものを材料としたことがあり、

これらはとても本来のすいとんと呼べるような代物ではなかったという。

 

・海行かば

当時の大日本帝国政府が国民精神総動員強調週間を制定した際のテーマ曲。

信時潔が日本放送協会の嘱託を受けて1937年(昭和12年)に作曲した。

歌詞は『万葉集』の大伴家持の長詩の一節だそうです。

https://www.youtube.com/watch?v=L9k1ILk2-IM

 

真白き富士の嶺

逗子開成中学校の生徒12人を乗せたボートが転覆、全員死亡した事件を歌った曲。

アメリカ人ジェレマイア・インガルス作曲の白人霊歌集の中の一曲に、

系列校の鎌倉女学校の教師で後にトキワ松学園の設立者になる三角錫子(みすみすずこ)が

歌詞をつけたもの。

https://www.youtube.com/watch?v=Ldt-eYK6oUw

 

 

◆桃の実

農家の蚕室

蚕を飼う部屋、という意味。羽村のあたりはかつて養蚕業が盛んで全国有数の土地だったそうですが、やがて衰退し、小作寮に使われた建物も、建物丸ごと蚕室だったもののようです。

 

 

◆動員に付き添って

日立航空機

第二次世界大戦まで軍用航空機、及び航空機用エンジンの製造を行っていた企業。

初の国産航空機エンジン「神風」を開発した東京瓦斯電気工業が、1939年(昭和14年)2月に

日立製作所へ経営権を譲渡し、その航空機部門を同年5月に分離独立して出来たとあります。

 

村山貯水池(多摩湖)

1927年に今の東大和市の狭山丘陵の渓谷に造られた人造湖です。

地図で見ると結構離れてます。

 

・休電日

他の手記では「電休日」という言葉も使われています。

電休日とは電力消費を休む日。いわゆる計画停電です。当然工場もお休みになります。

戦争末期には電力不足から、軍需工場においても週に一回、操業をストップする制度があったそうです 。

 

 

◆学校から工場へ

・ ハイミス

和製英語で「high+miss」。年のいった未婚女性のことを言います。

27歳でそんなことを言われたなんて、ある世代より下の人にとっては「はあ?」って感じですよね。

 

桜堤

現在の東京都立武蔵高等学校・附属中学校の所在地である武蔵境に隣接する地名。初代校舎は中野区にあったので、そこから歩いて行ったということでしょうか。片道11kmほどあるようです。

 

花も蕾の若桜、五尺の命引っさげて、国の大事に殉ずるは

これに続く歌詞は“我ら学徒の面目ぞ”というもので、まさしく学徒のために書かれた歌です。

最後の一行“ああ紅の血は燃ゆる”は歌のタイトルにもなっています。

https://www.youtube.com/watch?v=YaPUfgPlqPA

 

◆武蔵高女と戦争

東山(ひがしやま)

Wikipediaによると“干しいもを指す高知・愛媛の方言”とのことです。